前回訪れたのは今から5年前の、嫁のお父さんの1回忌と、その叔父さんの7回忌の合同法要の時だ。
そしてこの人たちと初めて会ったのが嫁のお父さんの葬式の時。
この程度の付き合いしかないのだが、とにかく私に対して好意的なのだ。
とにかく私を山形に住ませたくてしょうがないらしい。
このようによくしてくれる人たちなので、私にしても訪れるのはとても楽しみなのだ。
朝の9時に家を出て、本来なら選択すべき東北自動車道は日光の紅葉狩りシーズンなのであえて回避し、常磐道から磐越自動車道を抜けるコースを選択した。
これは前回と同じルートだ。
この選択で10km遠くなるが、1時間は早く着く。
本来であれば350kmなので、時速100kmだと3時間半で付く計算だが、途中あちこちのサービスエリアに止まり、遊びながら行ったので、たっぷり6時間かかった。
到着すると、これまた嫁の従兄弟で、その家の主の弟にあたる人が着いたばかりだった。
主の弟というからには、当然この家で生まれ育っている。
当然だが、嫁のお父さんもこの家で生まれ育っている。
その家の主の弟は現在千葉県の松戸市在住なので、走りぬけた距離は私とほぼ変わらない。
新幹線で遊びながら来た、嫁のお姉ちゃんとお母さんは、やはり到着が早く、とうに着いていた。
嫁のお母さんは荒川区出身なので、私同様こちらに血縁者はいないが、地元で不遇の少女時代を送った義母は、こちらの人たちに若い頃からとても可愛がってもらっているので、ここが大好きらしい。
特に亡くなった13回忌の当事者である叔父さんの奥さん、嫁から見れば叔母さんに当たる人にとてもよくなついているように見える。
その叔母さんが畑仕事だといえばくっついて行き手伝い、台所だといえばくっついて行き、夜も同じ部屋で寝てしまう有様。
息子は初めて山形を訪れてから、ほぼ毎年嫁のお姉ちゃんに山形に連れてきてもらっているので、すでにお馴染みさんだ。
今年は家で初めてカブトムシの幼虫が孵ったので、どうしても天然の腐葉土が欲しくて楽しみにしていた。
到着してすぐに庭に出て腐葉土探しを始めたが、さすがに庭にあるわけもなく、少し離れたところにある田舎名物の里山に行ってきた。
私も意識して腐葉土を見るのは初めてなので、どこから腐葉土が始まっているのか、落ち葉と腐葉土の区別がつかなくて困ったが、ペットのコジマで売っていた腐葉土の姿形を思い出しながら、息子と一緒にしこたま袋に詰めた。
夕方になり皆で温泉に行った。
その温泉は、数年前田んぼの真ん中に沸いた珍しい温泉だ。
お湯に色は付いていないが、硫黄に似た匂いと粘り気のある柔らかいお湯がとても不思議な感じがした。
風呂を出た後は、体がいつまでもすべすべとしたものだ。
それ故ファンは多いらしく、毎日通っている人が大勢いるのだとか。
山形の家からすぐの所に小学校があるが、驚いたことにこの温泉まで学区内なのだと。
この温泉には車で10分ほど走って行ってきたが、隣の高畠町がもうすぐそこだ。
先ほど地図で確認したら、どうも4kmくらいはありそうだ。
小学1年生もこの道のりを歩いてやってくるのだと、驚いた。
しかしそこは整備されていない田舎道、歩道などない。
そのためこの秋、小学校低学年の子2人が登校途中に車に跳ねられ一人が死亡、一人が意識不明の重態というじつに痛ましい事故が発生した。
それはニュースで報じられたので私もよく覚えている。
事故現場を通り過ぎたら、そこには未だに可愛らしい花束が捧げられていた。
うちの嫁など、息子をボクシングに通わせるのに、雨の日はバス停のあるTUTAYAまで歩いて行かなければいけないので、すごく可愛そうだと連発していたが、これを見れば我々の置かれている環境がいかに生ぬるいかと思わずにはいられない。
なにせ、そのバス停まで1kmもないのだから。
その夜は5年前に連れてきてもらった田舎料理屋に行ってきた。
こういうところに来るとけっこうどきどきで、何が出てくるか分からないといった恐怖心が多少ある。
前回など、こちらではどぶ川ににしか生息していない、およそ人間の食べ物ではないと思われる鯉の炉辺焼きを食べさせられとても困ったものだ。
と思ったら、今回もしっかり鯉の炉辺焼きが出てしまった。
嫁と目を合わせながら「困ったなあ」といった感じで、決して顔には出さずに5年ぶりに食したが、実は臭みが全く無く、とても上品な味なのだ。
綺麗な水で育った魚はこういうものである。
西友で売っている魚の方がよほど生臭い。
しかし元々私は金魚や鯉を見ると鳥肌が立ってしまう性質なので、美味しかろうが決して好むものではない。
そこで私は山形の家の主、兄貴と呼んでいるが、しこたま飲んで楽しく話した。
実は兄貴は1人や2人ではなく、色々と兄貴がいるので、「何々兄貴」と一言前置きをしている。
皆気さくで、豪快で、お人よしである。
この人たちを見ていると、世の中に悩み事ひとつ無いように見える気がする。
普段殆どお酒に手を付けない女性陣も、私が来ると多少飲んでしまう傾向にあるのだとか。
義母も「あんなに飲んだ○○さんは初めて見たねえ」と言っていた。
楽しい宴はいつまでも続き、晩秋の夜は更けていった。